三角関数
計量において非常に重要な概念となる三角関数及びその応用について解説します。

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三角関数の基礎
三角関数(trigonometric function)、あるいは円関数(circular function)と呼ばれる関数は、平面上の三角形において、角の大きさと線分の長さの関係を表した関数、およびそれらを拡張して得られる関数の総称です。三角関数には6つの関数が含まれ、それぞれ以下のように呼ばれます。

\[\begin{array}{ll}
\mbox{$\sin x$ (正弦関数, サイン; sine)} & \mkern100mu\mbox{値域は$-1 \le \sin x \le 1$}\\
\mbox{$\cos x$ (余弦関数, コサイン; cosine)} & \mkern100mu\mbox{値域は$-1 \le \cos x \le 1$}\\
\mbox{$\tan x$ (正接関数, タンジェント; tangent)} & \mkern100mu\mbox{値域はすべての実数}\\
\mbox{$\cot x$ (余接関数, コタンジェント; cotangent)} & \mkern100mu\mbox{値域はすべての実数}\\
\mbox{$\sec x$ (正割関数, セカント; secant)} & \mkern100mu\mbox{値域は$\sec x \le -1, 1 \le \sec x$}\\
\mbox{$\csc x$ (余割関数, コセカント; cosecant)} & \mkern100mu\mbox{値域は$\csc x \le -1, 1 \le \csc x$}
\end{array}
\]

それぞれの関数は、単位円(原点を中心とし、半径が1の円)を用いて、次のようにあらわされます:

定義
単位円周上に任意の点$\ \mathrm{P} (x,y)\ $をとったとき、半直線$\ \mathrm{OP}\ $と$\ x\ $軸とのなす角を$\ \theta\ $とすると(角度は反時計回りに測る)、

\[
\begin{array}{ll}
\sin\theta=y, & \cos\theta=x\\
\tan\theta=\cfrac{y}{x}=\cfrac{\sin\theta}{\cos\theta}, & \cot\theta=\cfrac{x}{y}=\cfrac{\cos\theta}{\sin\theta}\\
\sec\theta=\cfrac{1}{x}=\cfrac{1}{\cos\theta}, & \csc\theta=\cfrac{1}{y}=\cfrac{1}{\sin\theta}\\
\end{array}
\]
また、これらの関数の間には次のような関係式が成り立ちます。

定理
任意の角度$\ x\ $および$\ y\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
\begin{array}{ll}
\sin^2 x+\cos^2 x=1 & \mbox{(ピタゴラス基本三角関数公式)}\\
\sin(-x)=-\sin x & \mbox{(正弦の負角公式)}\\
\cos(-x)=\cos x & \mbox{(余弦の負角公式)}\\
\tan(-x)=-\tan x & \mbox{(正接の負角公式)}\\
\sin(90^\circ-x)=\cos x & \mbox{(正弦の余角公式)}\\
\cos(90^\circ-x)=\sin x & \mbox{(余弦の余角公式)}\\
\tan(90^\circ-x)=\cot x & \mbox{(正接の余角公式)}\\
\sin(180^\circ-x)=\sin x & \mbox{(正弦の補角公式)}\\
\cos(180^\circ-x)=-\cos x & \mbox{(余弦の補角公式)}\\
\tan(180^\circ-x)=-\tan x & \mbox{(正接の補角公式)}\\
\sin(x\pm y)=\sin x\cos y\pm\cos x\sin y & \mbox{(正弦の加法定理)}\\
\cos(x\pm y)=\cos x\cos y\mp\sin x\sin y & \mbox{(余弦の加法定理)}\\
\tan(x\pm y)=\cfrac{\tan x\pm\tan y}{1\mp\tan x\tan y} & \mbox{(正接の加法定理)}\\
\end{array}
\]

三角関数は、周期的に同じ値が現れる周期関数であることがその定義から分かります。
三角関数の周期は、正弦、余弦、正割、余割では360度、正接および余接では180度です。

以下に簡単な角度を例にいくつかの三角関数の値を示します。
\[
\begin{array}{lll}
\sin 0^\circ=0 & \cos 0^\circ=1 & \tan 0^\circ=0 &
\cot 0^\circ = - & \sec 0^\circ=1 & \csc 0^\circ=-\\
\sin 30^\circ=\cfrac{1}{2} & \cos 30^\circ=\cfrac{\sqrt{3}}{2} & \tan 30^\circ=\cfrac{1}{\sqrt{3}} &
\cot 30^\circ=\sqrt{3}&\sec 30^\circ=\cfrac{2}{\sqrt{3}}&\csc 30^\circ=2\\
\sin 45^\circ=\cfrac{1}{\sqrt{2}} & \cos 45^\circ=\cfrac{1}{\sqrt{2}} & \tan 45^\circ=1 &
\cot 45^\circ=1&\sec 45^\circ=\sqrt{2}&\csc 45^\circ=\sqrt{2}\\
\sin 60^\circ=\cfrac{\sqrt{3}}{2} & \cos 60^\circ=\cfrac{1}{2} & \tan 60^\circ=\sqrt{3} &
\cot 60^\circ=\cfrac{1}{\sqrt{3}}&\sec 60^\circ=2&\csc 60^\circ=\cfrac{2}{\sqrt{3}}\\
\sin 90^\circ=1 & \cos 90^\circ=0 & \tan 90^\circ=- &
\cot 90^\circ = 0 & \sec 90^\circ=- & \csc 90^\circ=1\\
\end{array}
\]
※分母が0となるため、$\tan 90^\circ,\ \tan 270^\circ, \dots,\ \cot 0^\circ,\ \cot 180^\circ, \dots\ $などは定義されません。
弧度法と256方位
ふつう、私たちが角度を測る場合は、直角を$\ 90^\circ\ $、一周を$\ 360^\circ\ $とした度数法を利用しますが、数学的には別の方法で角度を表した方が便利なことが多いです。
それが弧度法と呼ばれる測り方で、一周を$\ 2\pi\ \mathrm{rad}\ $とします。単位記号$\ \mathrm{rad}\ $は、ラジアン(radian)と読み、また、弧度法を使用していることが明らかな場合は普通省略されます。このページ内でも以後、角度は特に記載がない限りラジアン角とします。
なお、$\ \pi\ $は円周率のパイのことです。

度数法(degree)と弧度法(radian)の間には、以下の対応関係があります。

定理
同じ角度を度数法で測った値$\ \theta\ $と弧度法で測った値$\ \phi \ $の間には、常に次の等式が成り立つ。

\[
\phi=\cfrac{\pi\theta}{180}
\]

また、SDKシリーズ内では、角度の単位として一周を$\ 256\mbox{^}\ $とする256方位が使用されています。
8ビットで表すことのできる値が0から255までであるため、またコンピュータの内部演算は基本的に二進法であるため、度数法などよりもこちらの方が使い勝手が良いのです。
標準的な計量方法ではないため、特に名前や単位は与えられていませんが、このサイトでは便宜上単位記号として$\ \mbox{^}\ $を使用することにします。
したがって、例えば$\ 45^\circ=\cfrac{\pi}{4}\ \mathrm{rad}=32\mbox{^}\ $などとなります。

三角関数の計算
三角関数には様々な重要な性質がありますが、そのうちの一つとして、三角関数同士の関係を利用した計算があげられます。
これらは三角関数の基本かつ便利なものですので、ぜひ覚えてください。

値が未知の三角関数の値を求めたい場合、次の加法定理を利用すれば、値が既知の三角関数の値を用いて計算することができます。

定理 (加法定理)
任意の角度$\ x\ $および$\ y\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
\begin{array}{ll}
\sin(x\pm y)=\sin x\cos y\pm\cos x\sin y & \mbox{(正弦の加法定理)}\\
\cos(x\pm y)=\cos x\cos y\mp\sin x\sin y & \mbox{(余弦の加法定理)}\\
\tan(x\pm y)=\cfrac{\tan x\pm\tan y}{1\mp\tan x\tan y} & \mbox{(正接の加法定理)}\\
\end{array}
\]
加法定理を利用することで、次の倍角の公式・半角の公式が導かれます。

定理 (二倍角の公式)
任意の角度$\ x\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
\begin{array}{ll}
\sin 2x=2\sin x\cos x\\
\cos 2x=\cos^2 x-\sin^2 x=2\cos^2 x -1=1-2\sin^2 x\\
\tan 2x=\cfrac{2\tan x}{1-\tan^2 x}
\end{array}
\]

定理 (三倍角の公式)
任意の角度$\ x\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
\begin{array}{ll}
\sin 3x=3\sin x-4\sin^3 x\\
\cos 3x=4\cos^3 x-3\cos x\\
\tan 3x=\cfrac{3\tan x-\tan^3 x}{1-3\tan^2 x}
\end{array}
\]

定理 (半角の公式)
任意の角度$\ x\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
\begin{array}{ll}
\sin\cfrac{x}{2}=\pm\sqrt{\cfrac{1-\cos x}{2}}\\
\cos\cfrac{x}{2}=\pm\sqrt{\cfrac{1+\cos x}{2}}\\
\tan\cfrac{x}{2}=\pm\sqrt{\cfrac{1-\cos x}{1+\cos x}}\\
\end{array}
\]
また、指数関数におけるド・モアブルの定理あるいはオイラーの公式を利用することで、より一般の倍角・分角の公式は、虚数単位$\ i\ $を用いて次のように書けます。

定理 (n倍角の公式)
任意の角度$\ x\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
\sin (nx)=-\cfrac{i}{2}\left\{\left(\cos x+i\sin x\right)^n-\left(\cos x-i\sin x\right)^n\right\}\\
\cos (nx)=\cfrac{1}{2}\left\{\left(\cos x+i\sin x\right)^n+\left(\cos x-i\sin x\right)^n\right\}\\
\tan (nx)=-i\cfrac{\left(1+i\tan x\right)^n-\left(1-i\tan x\right)^n}{\left(1+i\tan x\right)^n+\left(1-i\tan x\right)^n}\]
サインおよびコサインの和と積について、次のような関係が加法定理より導かれます。

定理 (和と積の公式)
任意の角度$\ x,y\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
\cos x\cos y=\cfrac{\cos(x-y)+\cos(x+y)}{2}\\
\sin x\sin y=\cfrac{\cos(x-y)-\cos(x+y)}{2}\\
\sin x\cos y=\cfrac{\sin(x+y)+\sin(x-y)}{2}\\
\cos x\sin y=\cfrac{\sin(x+y)-\sin(x-y)}{2}\\
\sin x+\sin y=2\sin\left(\cfrac{x+y}{2}\right)\cos\left(\cfrac{x-y}{2}\right)\\
\sin x-\sin y=2\sin\left(\cfrac{x-y}{2}\right)\cos\left(\cfrac{x+y}{2}\right)\\
\cos x+\cos y=2\cos\left(\cfrac{x+y}{2}\right)\cos\left(\cfrac{x-y}{2}\right)\\
\cos x-\cos y=-2\sin\left(\cfrac{x+y}{2}\right)\sin\left(\cfrac{x-y}{2}\right)
\]
サインおよびコサインの和について、次のような公式があります。

定理 (合成公式)
任意の角度$\ x\ $および適当な定数$\ a,b\ $に対し、常に次の等式が成り立つ。

\[
a\sin x+b\cos x=\sqrt{a^2+b^2}\sin(x+\phi)\\
\mbox{ただし, $\phi=\left\{
\begin{array}{ll}
\arcsin\left(\cfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right) & \mbox{$a \ge 0\ $のとき}\\
\pi-\arcsin\left(\cfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right) & \mbox{$a < 0\ $のとき}
\end{array}
\right.$}
\]
$\arcsin\ $については、このページ下部の逆三角関数の項を参照してください。
三角関数の応用(1) 長さを測る
三角関数は、もともとは土地の測量の必要性から古代エジプト以来、何千年もの長い年月利用されてきたものです。
測量に使用されていた(そして現在もこの先の未来までずっと現役である)歴史から、数多くの幾何学的・数学的性質を持つことが分かっており、その用途は多方面にわたります。
また、もともとの目的であった幾何学的測量から離れて、物理的にも非常に重要な性質を備えており(例えば音叉を叩いた時の波形がサイン波であるのは有名ですね)、その非常に身近な例として次の項では円運動および単振動を取り上げています。この項では、測量に関する、それもごく基本的な内容を説明します。

三角形があって、2つの辺の長さと、その2辺のなす角度が分かっていれば、この三角形の面積を求めることができます。
より正確には、
(1) 3辺の長さ
(2) 2辺の長さとその間の角の大きさ
(3) 1辺の長さとその両端の角の大きさ
のいずれかが分かっていれば、後述する様々な定理を活用して残りの辺の長さや角度およびこの三角形の面積を求めることができます。これを三角形を解くと言ったりします。
なお、この条件は、三角形の合同条件と全く同じであり、すなわち、三角形の形状をただ一つに決める条件でもあります(すべての角度が既知、など、相似条件では大きさが定まらないので辺の長さが求まりません。)。

定理
任意の$\ \triangle\mathrm{ABC}\ $において、この三角形の面積$\ S\ $は、それぞれの辺の長さおよびそれぞれの頂点の角度を用いて次のように書ける。

\[
S=\cfrac{1}{2}\mathrm{AB}\cdot\mathrm{BC}\sin\angle\mathrm{ABC}\\
S=\cfrac{1}{2}\mathrm{BC}\cdot\mathrm{CA}\sin\angle\mathrm{BCA}\\
S=\cfrac{1}{2}\mathrm{CA}\cdot\mathrm{AB}\sin\angle\mathrm{CAB}
\]

直角三角形における三平方の定理(ピタゴラスの定理)を、三角関数を利用することで任意の三角形に適用できるように拡張することができます。

定理 (第一余弦定理)
任意の$\ \triangle\mathrm{ABC}\ $において、それぞれの辺の長さおよびそれぞれの頂点の角度について次の関係が成り立つ。

\[
\mathrm{BC}=\mathrm{CA}\cos\angle\mathrm{BCA}+\mathrm{AB}\cos\angle\mathrm{ABC}\\
\mathrm{CA}=\mathrm{AB}\cos\angle\mathrm{CAB}+\mathrm{BC}\cos\angle\mathrm{BCA}\\
\mathrm{AB}=\mathrm{BC}\cos\angle\mathrm{ABC}+\mathrm{CA}\cos\angle\mathrm{CAB}
\]
また、第一余弦定理を利用することで、次の等式が導かれます。

定理 (第二余弦定理)
任意の$\ \triangle\mathrm{ABC}\ $において、それぞれの辺の長さおよびそれぞれの頂点の角度について次の関係が成り立つ。

\[
\mathrm{BC}^2=\mathrm{CA}^2+\mathrm{AB}^2-2\mathrm{CA}\cdot\mathrm{AB}\cos\angle\mathrm{CAB}\\
\mathrm{CA}^2=\mathrm{AB}^2+\mathrm{BC}^2-2\mathrm{AB}\cdot\mathrm{BC}\cos\angle\mathrm{ABC}\\
\mathrm{AB}^2=\mathrm{BC}^2+\mathrm{CA}^2-2\mathrm{BC}\cdot\mathrm{CA}\cos\angle\mathrm{BCA}
\]

直角三角形の場合、第二余弦定理中のコサインのうち、どれか1つが0となります。
このとき、コサインの値が0である式を見ると、その式は三平方の定理そのものです。これが余弦定理が一般化された三平方の定理と呼ばれる所以です。
また、第二余弦定理をコサインについて解くことで、次の式が導かれます。これは、三角形の3辺の長さが分かっていれば、その値からすべての頂点の角度が求まるということを意味します。

定理
任意の$\ \triangle\mathrm{ABC}\ $において、それぞれの頂点の角度の余弦は、この三角形の辺の長さを用いて次のように書ける。

\[
\cos\angle\mathrm{CAB}=\cfrac{\mathrm{CA}^2+\mathrm{AB}^2-\mathrm{BC}^2}{2\mathrm{CA}\cdot\mathrm{AB}}\\
\cos\angle\mathrm{ABC}=\cfrac{\mathrm{AB}^2+\mathrm{BC}^2-\mathrm{CA}^2}{2\mathrm{AB}\cdot\mathrm{BC}}\\
\cos\angle\mathrm{BCA}=\cfrac{\mathrm{BC}^2+\mathrm{CA}^2-\mathrm{AB}^2}{2\mathrm{BC}\cdot\mathrm{CA}}
\]

また、三角形の外接円に関して、次のような定理があります。

定理 (正弦定理)
任意の$\ \triangle\mathrm{ABC}\ $において、この三角形の外接円の半径$\ R\ $は、この三角形の辺の長さと頂点の角度を用いて次のように書ける。

\[
2R=\frac{\mathrm{AB}}{\sin\angle\mathrm{BCA}}=\frac{\mathrm{BC}}{\sin\angle\mathrm{CAB}}=\frac{\mathrm{CA}}{\sin\angle\mathrm{ABC}}
\]

なお、この定理を利用することで一辺とその両端の角から残る2辺の長さを求めることができます。

正多角形の面積が知りたい場合、次のような公式があります。

定理
任意の正$\ n\ $角形において、その面積$\ S\ $は、この多角形の一辺の長さを$\ a\ $とすると次のように書ける。

\[
S=\cfrac{na^2}{4}\cot\cfrac{\pi}{n}
\]
三角関数の応用(2) 円運動と単振動
三角関数が円関数とも呼ばれる理由は、三角関数そのものが円を用いて定義できるためです。実際、このページの冒頭では、三角関数を単位円を用いて定義しました。三角関数には、ほかにもさまざまな方法で定義できることが知られていますが、そのどの定義を使用しても、まったく同じ性質、同じ値をもつ三角関数となります。
さて、三角関数が深くかかわる物理現象の一つと言えば波動ですが、その波動を細かく分析していくと、単振動と呼ばれる物理現象に行きつきます。そしてこの単振動は、等速円運動(文字通り、一定の速さで円を描くように動く運動)と深い関わりを持っています。三角関数が円を用いて定義できるのであれば、円運動も三角関数を用いて記述できるはずです。あまり深く物理学に突っ込むのはこのページの趣旨と外れてしまいますので、簡単に最低限の部分を説明します。

単位円を用いた三角関数の定義により、媒介変数$\ \phi\ $を用いて、$\ xy\ $平面上の点$\ \mathrm{P}\ $を、
\[\mathrm{P}(x,\ y)=(r\cos\phi,\ r\sin\phi)\]と定めると、この点$\ \mathrm{P}\ $の描く軌跡は、原点を中心とした半径$\ r\ $の円となります。
さて、この$\ \phi\ $が時刻$\ t\ $と、定数$\ \alpha,\ \omega\ $を用いて$\ \phi=\omega t+\alpha\ $と書き表せるとき、この点は、一定の速度で円周上を回っていくことになります。これが等速円運動です。
この等速円運動において、$\ \omega\ $を角速度、$\ \alpha\ $を初期位相(最初に点$\ \mathrm{P}\ $のあった角度)といいます。
また、点$\ \mathrm{P}\ $が円周上をちょうど1周するのにかかる時間、すなわち、この円運動の周期は$\ T=\cfrac{2\pi}{\omega}\ $とあらわされ、角振動数(回転速度)は、$\ f=\cfrac{\omega}{2\pi}=\cfrac{1}{T}\ $とあらわされます。
また、同じ角速度で回っている場合、回転の中心から遠ざかるほど、その点の移動速度は速くなります。半径$\ r\ $の位置での速度は、$\ v=r\omega \ $とあらわされます。

さて、円運動を真上(回転面に対して垂直な方向)ではなく横(回転面と平行な方向)から見てみましょう。この点$\ \mathrm{P}\ $の動きはどのように見えるでしょうか。
実際にやってみれば簡単にわかりますね。縦に振動しています。この時の振動は、単振動(自由振動)と呼ばれる運動と同じになります。
単振動の簡単な例としては、ばねに重りをぶら下げたときの振動などがそうです。身の回りにありふれた動きですね。
単振動が等速円運動の正射影(回転面に平行な角度で光を当てたときの影の動き)と全く同一であることから、単振動の性質は等速円運動と非常によく似ています。
周期は円運動の時と同じく$\ T=\cfrac{2\pi}{\omega}\ $、振動数も円運動の角振動数に一致して$\ f=\cfrac{\omega}{2\pi}=\cfrac{1}{T}\ $となります。また、円運動の半径$\ r\ $は、この振動の振幅$\ A\ $に対応し、円運動の初期位相はそのまま単振動の初期位相となります。時刻$\ t\ $での座標は、$\ x=A\sin(\omega t+\alpha)\ $とあらわされます。
円運動を射影したものが単振動ですから、たとえば円運動しているジンガーの$\ x,\ y\ $いずれかの座標書換えを止めてやれば、そのジンガーは縦あるいは横に単振動することになります(ちなみにSDKシリーズ原作の往復運動は折り返しの端を除いて等速直線運動です)。
このように物理現象とその裏に潜む数学を理解することで、原作にない新しい動きを取り入れることができるようになります。
逆三角関数
三角関数の値から元の角度を求めるような関数を逆三角関数と言います。とはいっても、三角関数のもつ周期性のため、そのままでは複数の角度が出てくることになります。これが不都合であれば、取りうる値を制限して一つに絞り込むことができます。数学ではむしろそうすることが普通で、以下に挙げるものはすべて主値と呼ばれるものです。もちろん、主値以外の値を使用したい場合は使ってもかまいませんが、通常はこの定義を用いたので十分です。

\[\begin{array}{ll}
\mbox{$\arcsin x\ $(逆正弦関数, アークサイン; arcsine)} & \mkern150mu\mbox{$x\ $の範囲は$\ -1 \le x \le 1,\ $主値は$\ -\cfrac{\pi}{2} \le \arcsin x \le \cfrac{\pi}{2}$}\\
\mbox{$\arccos x\ $(逆余弦関数, アークコサイン; arccosine)} & \mkern150mu\mbox{$x\ $の範囲は$\ -1 \le x \le 1,\ $主値は$\ 0 \le \arccos x \le \pi$}\\
\mbox{$\arctan x\ $(逆正接関数, アークタンジェント; arctangent)} & \mkern150mu\mbox{$x\ $の範囲はすべての実数, 主値は$\ -\cfrac{\pi}{2} < \arctan x < \cfrac{\pi}{2}$}\\
\mbox{$\mathrm{arccot}\ x\ $(逆余接関数, アークコタンジェント; arccotangent)} & \mkern150mu\mbox{$x\ $の範囲はすべての実数, 主値は$\ 0 < \mathrm{arccot}\ x < \pi$}\\
\mbox{$\mathrm{arcsec}\ x\ $(逆正割関数, アークセカント; arcsecant)} & \mkern150mu\mbox{$x\ $の範囲は$\ x \le -1, x \le 1,\ $主値は$\ 0 \le \mathrm{arcsec}\ x < \cfrac{\pi}{2}, \cfrac{\pi}{2}< \mathrm{arcsec}\ x \le \pi$}\\
\mbox{$\mathrm{arccsc}\ x\ $(逆余割関数, アークコセカント; arccosecant)} & \mkern150mu\mbox{$x\ $の範囲は$\ x \le -1, x \le 1,\ $主値は$\ -\cfrac{\pi}{2} \le \mathrm{arccsc}\ < 0, 0 < \mathrm{arccsc}\ \le \cfrac{\pi}{2}$}
\end{array}
\]
なお、$\ \arcsin x\ $などといった書き方は長いので、代わりに$\ \sin^{-1} x\ $や$\ \mathrm{Sin}\ x\ $といった書き方をすることもあります。
$\ \sin^{-1} x\ $は、サインのマイナス1乗、すなわち$\cfrac{1}{\sin x}\ $の意味ではありません。そのほかも同様です。

以下に簡単な値を例にいくつかの逆三角関数の値を示します。
\[
\begin{array}{lll}
\arcsin 0=\arccos 1=\arctan 0=0\\
\arcsin\cfrac{1}{2}=\arccos\cfrac{\sqrt{3}}{2}=\arctan\cfrac{1}{\sqrt{3}}=\cfrac{\pi}{6}\\
\arcsin\cfrac{1}{\sqrt{2}}=\arccos\cfrac{1}{\sqrt{2}}=\arctan 1=\cfrac{\pi}{4}\\
\arcsin\cfrac{\sqrt{3}}{2}=\arccos\cfrac{1}{2}=\arctan\sqrt{3}=\cfrac{\pi}{3}\\
\arcsin 1=\arccos 0=\cfrac{\pi}{2}
\end{array}
\]
※$\ \tan\ $や$\ \cot\ $などが定義されない角度に対しては、対応する逆三角関数も定義されません。

なお、逆三角関数に関して、次の関係式があります。

定理
逆正弦関数および逆余弦関数が定義される任意の$\ x\ $において、常に$\ \arcsin x+\arccos x=\cfrac{\pi}{2}\ $

三角関数表
よく使用される三角関数の厳密な値、および度数法と256方位での三角関数表(小数点以下4位まで)を掲載しています。
なお、度数法と256方位での三角関数表は0度~90度までの値のみ掲載していますが、それ以外の角度の値は三角関数の相互関係から容易に求まります。

角度 正弦
sin
余弦
cos
正接
tan
余接
cot
正割
sec
余割
csc
$0$
$0$
$1$
$0$
$-$
$1$
$-$
$\cfrac{\pi}{12}$
$\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$2-\sqrt{3}$
$2+\sqrt{3}$
$\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$\cfrac{\pi}{6}$
$\cfrac{1}{2}$
$\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$\sqrt{3}$
$\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$2$
$\cfrac{\pi}{4}$
$\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$1$
$1$
$\sqrt{2}$
$\sqrt{2}$
$\cfrac{\pi}{3}$
$\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$\cfrac{1}{2}$
$\sqrt{3}$
$\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$2$
$\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$\cfrac{5\pi}{12}$
$\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$2+\sqrt{3}$
$2-\sqrt{3}$
$\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$\cfrac{\pi}{2}$
$1$
$0$
$-$
$0$
$-$
$1$
$\cfrac{7\pi}{12}$
$\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$-\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$-2-\sqrt{3}$
$-2+\sqrt{3}$
$-\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$\cfrac{2\pi}{3}$
$\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$-\cfrac{1}{2}$
$-\sqrt{3}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$-2$
$\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$\cfrac{3\pi}{4}$
$\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$-1$
$-1$
$-\sqrt{2}$
$\sqrt{2}$
$\cfrac{5\pi}{6}$
$\cfrac{1}{2}$
$-\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$-\sqrt{3}$
$-\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$2$
$\cfrac{11\pi}{12}$
$\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$-\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$-2+\sqrt{3}$
$-2-\sqrt{3}$
$-\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$\pi$
$0$
$-1$
$0$
$-$
$-1$
$-$
$\cfrac{13\pi}{12}$
$-\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$-\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$2-\sqrt{3}$
$2+\sqrt{3}$
$-\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$-\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$\cfrac{7\pi}{6}$
$-\cfrac{1}{2}$
$-\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$\sqrt{3}$
$-\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$-2$
$\cfrac{5\pi}{4}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$1$
$1$
$-\sqrt{2}$
$-\sqrt{2}$
$\cfrac{4\pi}{3}$
$-\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$-\cfrac{1}{2}$
$\sqrt{3}$
$\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$-2$
$-\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$\cfrac{17\pi}{12}$
$-\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$-\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$2+\sqrt{3}$
$2-\sqrt{3}$
$-\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$-\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$\cfrac{3\pi}{2}$
$-1$
$0$
$-$
$0$
$-$
$-1$
$\cfrac{19\pi}{12}$
$-\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$-2-\sqrt{3}$
$-2+\sqrt{3}$
$\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$-\sqrt{6}+\sqrt{2}$
$\cfrac{5\pi}{3}$
$-\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$\cfrac{1}{2}$
$-\sqrt{3}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$2$
$-\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$\cfrac{7\pi}{4}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$-1$
$-1$
$\sqrt{2}$
$-\sqrt{2}$
$\cfrac{11\pi}{6}$
$-\cfrac{1}{2}$
$\cfrac{\sqrt{3}}{2}$
$-\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$-\sqrt{3}$
$\cfrac{2}{\sqrt{3}}$
$-2$
$\cfrac{23\pi}{12}$
$-\cfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$
$\cfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}$
$-2+\sqrt{3}$
$-2-\sqrt{3}$
$\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$-\sqrt{6}-\sqrt{2}$
$2\pi$
$0$
$1$
$0$
$-$
$1$
$-$